ツール・ドゥ・ウエダ山越えステージ 真田郷の山城群
▲砥石城麓から望む上田市街地
この年の夏の城攻めは、上田市に合併された旧真田町に点在する真田氏の城を見ることでした。上田駅に着いたところで、まず上田城の見学を済ませておくことにしました。上田城から真田信之が松代城(川中島の戦いに登場する海津城のこと)に転封されたのは1622年のことで、以後ここは城下町でなくなりました。それもあってか、町の人々の真田氏に寄せる思いは強いものがあるようです。駅前にあるのは真田信繁(幸村)像で、やっぱりここでも一番の著名人です。
翌日レンタサイクルにて真田郷に向かうことにしました。レンタサイクルは市内観光にお使い下さいと係員に言われたので、今は真田も上田市に含まれますが、ふと真田に向かうといったら貸してくれないような気がして、信濃国分寺を見ますと虚偽申告をしました。しかし正直に申告したら、やはりそんなことお止めなさいと言われたような気がします。というのも、これがツール・ドゥ・ウエダの山越えステージになろうとは、思いもよらなかったからです。
真田郷に向かって走り始めたら、ただただひたすら続く登り道。しかも、幹線道路なのに片側1車線の道でしたので、ダンプに撥ねられては大変とばかりに、狭い上り坂の歩道をバランス取りながらママチャリを漕ぎ続けました。その道は横道との合流点では歩道と高い段差があるもので、確かなバランスが要求されるサイクリングになってしまいました。
最初に訪れたのが、真田郷の入り口にある砥石城。まるで一枚板が立っているように見えることから名づけられたとも言われています。またここは、いくさ上手と言われた武田信玄が村上義清の反撃を受けて大敗北を喫し、有力武将が討ち死にしたことで砥石崩れと言われた因縁の城です。
出発して最初の見学先でしたので、まだ脚にガタが来ておらず、自転車で坂道を登り切ったところで、直ちに登攀開始。信玄が負けただけに急峻な道でしたが、道は整備されていて滑るということはありませんでした。登り切ったところで本丸を見学していると中年のご婦人がひょいひょいと身軽に登って来たので、すごいですねと挨拶しました。
聞かれるままに、千葉から砥石崩れと言われた城を見たくて来たと話したら、いたく感激されて、なんと鞄に入れていたこの城のパンレットを貰いました。聞けば、今登って来た道の整備をボランティアでやっており、麓に住んでいて毎日ここに登って来るとの由。道理で健脚な訳です。こういう方がおられる城は、幸せです。郷土愛に富む人々が郷土の城を整備してこそ、郷土の歴史は生きたものとなります。但し、ここまでレンタサイクルで来たと言ったら、驚いて(呆れて)ました。金のない貧乏人と思われたようです。
下山して、また自転車に乗って真田郷最奥部に聳える真田本城を目指しました。ここもまた上り坂、ひたすら漕ぐだけでした。城跡に登ると、そこからは真田郷を眼下に、砥石城そして上田の市街地も見通すことが出来ました。狭い真田郷を支配していた真田氏が、広い上田の支配を夢見たのが頷ける光景でした。
そこから真田家ゆかりの寺へと向かいましたが、着いたところで見上げると延々と続く階段の先に山門が見えており、さすがに足に来ていてそこからの参拝にとどめました。その近くに市民ボランティアの方が詰めている無料休憩所があったので一休み。勧められるままに、無料の冷たい麦茶をやかん丸ごと戴いてしまいました。申し訳ないので、お土産に真田のキャラクター・クリア・ファイルと六文銭の模様入りの刀が付いたストラップを求めました(安すぎたかも?)。表に自転車を置いたので、どこから来たのかと聞かれるので上田駅からと答えたら、ここでも驚かれました。この辺りの人は自転車で上田まで行くことがあっても、帰りは誰かが車で迎えに行って自転車も積んで帰るとのこと。あの坂道は地元の人でも、まず登って来ないそうです。自転車でここまで来た観光客も聞いたことがないとの由。その休憩所を出たら、観光客らしき年輩のカップルが乗った車が通過して行きました。足に自信のない方の上田郷観光は、レンタカーがお勧めです。
真田郷最奥部の城郭群を見た後、ペダルを踏むことなく、降りて来て更に古い時代の真田館と伝わる緩い斜面に築かれた館や、徳川勢を破った第一次上田合戦の折、奇襲部隊として昌幸の弟が守っていた矢沢城を見た後、一気に上田の町中まで高速でペダルを漕がずに降りて来ました。結構稼いだ高度でしたが、降りるときはあっという間でした。
鉄道線路際の道路に降りたところで、そこからレンタサイクルを借してくれた担当者への義理(申告義務)を果たすために、市街地とは反対側にある信濃国分寺跡に見てからホテルに戻りました。後日、当日の行程をチェックしたら、出発した上田駅前を起点にして、自転車を転がした道路の比高差は240m、登った城跡についてならば比高差は380m、登った山城は5つ、走行距離は30Kmありました。それでも翌日は、朝一でホテルを出て、開園と同時に小諸城内に入ってフットワーク宜しくうろついていましたから、頭はともかく、足だけは丈夫なようです。
▲上田市内に残る旧北国街道
▲真田本城から真田郷を望む
▲上田城から砥石城を望む
▲真田本城から砥石城上田市街地を望む
▲真田郷から見る真田古城
▼砥石城 本丸切岸